METAL HEAT TREATMENT

金属熱処理

YDKグループでは、主力であるめっき加工に加え、多彩な熱処理技術を取り揃えております。
「耐食性を上げたい」「硬度を高めたい」など、お客様の目的に応じて、各種材料にご要望に合わせた最適な熱処理をご提案いたします。

焼入れ

高周波焼入れ(誘導加熱焼入れ)

高周波焼入れは、高周波誘導加熱を利用した代表的な熱処理方法です。
必要な部位のみを選択的に加熱・硬化できる点が特⾧です。
短時間で表面層を加熱し、急冷によってマルテンサイト組織を形成することで高い硬度を付与します。
一方で、内部は加熱の影響が少ないため、母材の靭性を維持することが可能です。
このように、表面硬化と内部靭性を両立できることから、耐摩耗性および耐疲労強度の向上を目的とした熱処理として広く活用されています。

特徴

  • 必要部位への選択的な局部硬化が可能
  • 短時間処理による熱影響の低減と低歪化
  • 表面硬化と内部靭性の両立
  • 耐摩耗性および耐疲労強度の向上
  • 表面硬さ:HS75~85 程度(HRC55~60相当)

設計

項目 詳細
硬さ 鋼種・前処理・焼戻しにより設計
有効硬化層 周波数・加熱時間・冷却で制御
変形 全体焼入れより抑えやすいことがある

シャフトの高周波焼入れ

  • 加熱コイル(黄色)の中にシャフトを挿入して部品を上から下に降下させる
  • 赤色部分が加熱されているゾーン
  • 加熱ゾーンの下に冷却器をセットして回転された部品を降下させながら噴射冷却にて焼入れを行う
受け治具とキャリア本体のセット状態

対応素材

炭素鋼(S45C等)、合金鋼(SCM系)など

事業所・グループ会社

ご相談ください

硬化範囲・硬化層深さ・硬さ・変形許容をセットで整理すると、最適な条件設計がしやすくなります。
図面段階からご相談ください

ガス浸炭焼入れ

ガス浸炭焼入れは、雰囲気ガス中で鋼表面に炭素を拡散浸透させ(浸炭)、
その後焼入れで表層を高硬度化する処理です。

SCM420材ギャサンφ385×H300 浸炭焼入れ

特徴

  • 表層高硬度化による耐摩耗・耐ピッチング性向上
  • 心部の靭性を残しやすい

ヒートパターン例

パージとは、製品を均一に加熱することを目的とした保持時間のことです。
浸炭、拡散、焼入れの一連の処理では、部品を加熱保持し、油冷却などによる急冷を実行します。
また、焼戻しとは、焼入れによって生じたストレスを軽減させ、耐摩耗性と靱性を高めることを目的とした熱処理法です。

一般的な浸炭焼入れのヒートパターン

事業所・グループ会社

ご相談ください

歯車の寿命課題(ピッチング・摩耗・欠け)や、歪み許容(研削有無)を共有いただくと、層深さ設計がスムーズです。

ガス浸炭窒化焼入れ

ガス浸炭窒化焼入れは、浸炭に加えて窒素も拡散させ、焼入れにより表層を硬化させる処理です。
浸炭焼入れに比べ、狙いたい特性(耐摩耗・耐焼付き・疲労など)に応じて条件設計の幅が広域です。

事業所・グループ会社

ご相談ください

現行の浸炭焼入れで「歯面寿命」「焼付き」「歪み」課題がある場合、代替候補として比較検討をご相談ください。

ガス酸軟窒化焼入れ

ガス窒化とホモ(水蒸気)処理を複合させた熱処理です。
最表面部の約10μ~20μmに窒素化合物層(炭化物)を形成することで、耐食性と相手部品へのなじみ性を向上させることが可能です。
また、被膜の直下に鉄窒化物が形成されるため、Hv600以上の表面硬さを実現できます。
そのため、低負荷の摺動摩耗対策に優れているうえに、処理温度が低いため変形・歪の少ない表面硬化法です。
さらに耐塩水噴霧テストでは、未処理のものは約1時間で赤錆が発生するのに対し、処理したものは10倍以上の時間で赤錆がわずかに発生する程度に抑えられます。

特徴

  • ガス軟窒化+ホモ処理の複合で、酸化皮膜を形成
  • 変形や歪みが少ない
  • 表面硬さHv600以上を実現できる

ヒートパターン例

ガス酸軟窒化処理の特徴

事業所・グループ会社

ご相談ください

「摺動で焼付きが出る」「歪みを抑えたい」「相手材とのなじみを良くしたい」などの課題がありましたらご相談ください。

無酸化焼入れ(光輝焼入れ)

一般的に無酸化焼入れ‧光輝焼入れと呼ばれる金属熱処理法です。
無酸化焼入れ処理とは、含有炭素量が0.3%以上の鋼部品を、その材質が持つ炭素濃度と同等の雰囲気ガスを形成させた加熱炉で加熱保持後、油冷却などで急冷して部品の表面を硬化させる処理です。
耐摩耗性と靱性を高めることが可能です。
当社の無酸化焼入れは、滴注式ガス浸炭窒化炉を使います。
加熱炉にキャリアガスとなるメタノールを直接滴下し、熱分解させた炭素で雰囲気ガスを形成します。
その後、プロパンガスによるエンリッチガスを供給することで、表面の炭素濃度を制御する手法です。

S45C材 スパナ 無酸化焼入れ

対応素材

無酸化焼入れを行う鋼種は、機械構造用炭素鋼のS45Cや、機械構造用合金鋼のSCM435などが代表的なものです。
シャフトの外径・歯車・スプロケットなどの表面硬化に用いられます。

事業所・グループ会社

ご相談ください

外観・表面粗さ・寸法変化の要求がある場合、従来焼入れとの差分を含めてご相談ください。

高濃度浸炭焼入れ

浸炭熱処理における異常組織であるセメンタイト(炭化物)を金属表面に微細形成させる熱処理法です。
セメンタイトは、Hv1300以上と非常に硬い性質を有しているため、従来の浸炭焼入れなどによる耐摩耗性や耐ピッチング性をはるかに上回る表面硬化を実現できます。
歯車においては、耐摩耗性・耐ピッチング性を向上させ、Hv850以上の表面硬さ、Hv800の生地硬さが得られます。
ただし、異常組織であるセメンタイトが結晶粒界に発生すると粒界剥離・破壊を起こし、著しく靱性を低下させる点にご注意ください。

金属表面の組織

通常浸炭焼入れ組織
A)表層部粒状炭化物析出
B)表層部網目状炭化物析出

事業所・グループ会社

ご相談ください

外観・表面粗さ・寸法変化の要求がある場合、従来焼入れとの差分を含めてご相談ください。

調質・光輝焼入れ

調質は、焼入れ後に焼戻しを行い、強度と靭性のバランスをとる熱処理です。
一方、光輝焼入れは無酸化雰囲気で表面酸化を抑える焼入れとして位置づけられます。

事業所・グループ会社

ご相談ください

「強度重視か」「歪み/表面品質重視か」で処理選定が変わります。
要求特性を整理してご相談ください。

ソフトヒズミック(低歪熱処理)

浸炭焼入れでは、熱処理による歪みを完全に無くすことはできません。
ソフトヒズミック(低歪熱処理)は、焼入れ条件を最適化することで、熱処理による歪みを抑制し、熱処理の適用範囲を広げた技術です。
鋼は加熱によって膨張し、焼入れ・冷却時には収縮や寸法変化が発生します。
さらに、焼入れ変態による追加の寸法変化も生じるため、熱処理後の歪みは避けられません。
当社では、従来よりも低い条件で焼入れを行うことで、熱処理変形を大幅に抑制することを可能にしています。
また、更なる低歪化についても研究・検証を進めております。

特徴

本技術は、従来よりも低い温度域での焼入れを可能とすることで、熱処理に伴う歪みの低減を実現しています。
焼入れ時の加熱温度を抑えることで、加熱・冷却に起因する膨張収縮や、組織変態による寸法変化を低減し、製品の寸法安定性を向上させます。
また、さらなる低温域での処理についても技術的な可能性が確認されており、用途や要求品質に応じた最適な熱処理の選択が可能です。

技術説明

浸炭焼入れでは、熱処理による歪みを完全に避けることは困難です。
鋼は加熱温度が高くなるほど熱膨張による変形が大きくなり、焼入れ・冷却時の寸法変化に加え、焼入れ変態による追加の寸法変化も発生します。

ソフトヒズミック(低歪熱処理)は、焼入れ温度の低温化により熱処理による歪みを抑制する技術です。
当社では、一般的に850℃以上で行われる熱処理に対し、焼入れ温度を低く設定することで熱処理による変形を最小限に抑えることを可能にしています。

また、理論上は約590℃までの低温域での処理が可能であることが確認されています。

メリット

  • ①熱処理変形の低減
    焼入れ温度を低くすることで、熱膨張による変形や寸法変化を抑えます。

  • ②高精度な製品の実現
    歪みを抑えることで、加工精度の高い製品づくりが可能になります。

  • ③品質の安定化
    熱処理変形を抑制することで、品質のばらつきを低減し安定した製品供給を実現します。

事例

VTC用スプロケットの熱処理後、全歯OBDにて40μm以内の変形に抑える実績があります。

事業所・グループ会社

ご相談ください

歪み(平面度/同軸度/歯形)課題がある場合、材質・要求硬化深さ・後工程(研削有無)を共有のうえご相談ください。

ソフトヒズミック(低歪熱処理)について詳しく見る